壊れるほど抱きしめて
姉の死から三ヶ月が経ったある日、学校から家に帰ると、聖のお母さんとバッタリ会った。
「小春ちゃん」
「おばさん」
「ちょうど良かった。小春ちゃんにお願いがあるの」
「お願い?」
おばさんは、困惑した表情で私に言った。
「聖を助けてほしいの。あの子、由利ちゃんが亡くなってからずっと家に引きこもってるのよ。私達も聖が由利ちゃんを大切にしていたのは分かってたし、由利ちゃんが亡くなったのは私達も凄く悲しかったわ。由利ちゃんと結婚するって私達にも聖は言ってたし、由利ちゃんの死を受け入れられなくて、信じたくなくて、葬儀にも行かなかった。あの日から時が止まったように笑わなくなって、大学も辞めてしまうほど、あの子にとって由利ちゃんの存在は大きかったの。だけどいつまでもこのままじゃいけないし、小春ちゃんなら話を聞いてくれるんじゃないかって思って」
おばさんは今にも泣き出しそうな顔で、私にそう言った。
私も姉の死は辛かった。
父だけじゃなく姉までも亡くなってしまった事は、私にとって悲しいものだった。
だけど、姉はもう戻ってこない。
いつまでも悲しんでいたら、姉も悲しむと思い、少しずつ立ち直っていった。
それに姉は、父が亡くなって、悲しむ私に言ってくれた。
「小春、私も凄く悲しい。だけどね、悲しんでたらお父さんも悲しむと思うの。お父さんが亡くなった事は悲しい。だけどさ、お父さんとの楽しかった思い出は沢山あるでしょ?その思い出を思い出したら悲しまなくてすむし、会えないけどお父さんは私達の中で、いつも笑顔で笑って見守っていてくれるから。だからもう泣かないで」
姉の言葉があったから私は、悲しみから立ち直る事が出来た。
今回の姉の死も、姉の言葉を思い出して、悲しんでばかりじゃダメだって立ち直る事が出来たんだ。