壊れるほど抱きしめて
「聖、受け入れられない気持は凄くわかるよ。私だって同じだったから。お父さんも、お姉ちゃんも、会いたいと願っても、もう会えない。
お願い聖、現実を受入れて。お姉ちゃんの死から目を逸らさないで!」
「……」
それでも聖は顔を下にしたまま動かない。
「お姉ちゃんね、私に言っていたの。聖が笑うと私も笑顔になるし、幸せだって。好きな人にはいつも笑顔でいてもらいたいって……。聖がお姉ちゃんを想う気持ちと一緒で、お姉ちゃんも聖を愛していた。最後にお姉ちゃんに会ったのは病院だったでしょ?きっとお姉ちゃん、聖に会いたくて、来てくれるのをずっと待ってるよ。一緒にお墓参りに行こう」
そう言って私は、聖の手を握った。
すると聖の体は震えだし、大粒の涙が私の手にポタリと落ちた。
きっと、姉の死を受け入れられなくて、まだ生きているって、聖は認めたくなくて、自分の感情を閉じ込めたんだろう。
最愛の人の死。
私だって姉の死を信じたくなかった。
だけど前に進む為には、受け入れなきゃいけない。
いつまでも悲しんでると、姉もきっと悲しむと思う。
姉だって、まさか自分が交通事故に合って死んでしまうなんて思っていなかっただろう。
姉は強くてしっかりしているから、私達の所に来て『泣かないで』って言ってると思う。
『私の分まで生きて、幸せになって』ってそう言葉をかけてるに違いない。
父が亡くなった時、姉が私に言ってくれたように、姉は私の心の中で生きていて、いつも笑顔で私に微笑みかけてくれてる。
「泣いたっていいんだよ。辛かったね……。でもね、お姉ちゃんと過ごした日々も、笑っている笑顔も、ずっと忘れないでほしい。お姉ちゃんを愛していた事も。お姉ちゃんは聖の幸せを願ってるし、いつでも聖を見守ってくれてる。だから前に進もう」
すると聖は声を出して泣いた。
私は落ち着くまで、聖の背中を擦り続けた。