壊れるほど抱きしめて
何も喋らなかったけど、坂木くんはキレイにカレーを食べてくれた。
食べ終わり、持ってきたおぼんにお皿を乗せた。
「坂木くん」
「……何」
「これから毎日一緒に、ご飯を食べない?」
「は?」
「毎日と言うか、勤務時間が一緒の時だけでもいいから。今まで、お母さんと一緒にご飯を食べていたけど、実家から工場まで通勤しても、一時間はかかるからアパートに引っ越したんだけど、一人じゃ寂しいんだよね。ダメかな?」
私は坂木くんともっと、もっと、一緒に居る時間が欲しくて、ダメかもしれないと思いつつ聞いてみた。
「……」
坂木くんの返事はない。
「坂木くんが断っても、坂木くんの家に行くけどね」
私は笑顔で言った。
「あんた、何がしたい」
「言ったでしょ?坂木くんとご飯を一緒にたべたいだけ」
坂木くんは諦めたのか、それ以上は何も言わなかった。
「洗い物、させてもらうね」
私は立ち上がり、おぼんを持ってキッチンに向った。
お皿とスプーンを洗うと、食器棚にそれをなおした。
坂木くんは普段は料理をしないのか、食器棚には食器も少なく、私と一緒に食べるお皿を置いておきたかった。
食器棚から離れて、坂木くんの所に行こうとしたら、目の前に坂木くんが立っていて、私の体を食器棚に押しつけた。
「何で俺に関わろうとする。昨日、言っただろ?」
「……私は坂木くんと一緒に居たいだけ」
「迷惑なんだよ!どうしてあんたは俺にこだわるんだ」
"好きだから"そう言いたいのをグッと堪えた。
「特別な意味なんてないよ。寂しいから一緒に居たくて、セックスの相性が良かったから抱かれたいだけ」
本当は違う。
好きだから一緒に居たくて、好きだから坂木くんに抱かれたいんだ。
ただ私は、坂木くんの側に居たいーー