壊れるほど抱きしめて
ーーーピンポーン
インターフォンを鳴らして暫くすると、玄関の扉が開いた。
坂木くんは寝ていたのか、眠そうな顔をしている。
「おはよ、起こしちゃった?ごめんね、また夕方に来るよ」
夜勤で帰るのが遅かったから、まだ寝ていたのかもしれない。
早く会いたい気持ちから、お昼も一緒に食べれたらいいな……なんて気持ちでいたけど、坂木くんだって疲れてるし眠いよね。
そう言って荷物を持って帰ろうとした時。
「入れば……」
坂木くんはそう言った。
「いいの?」
「入らないなら鍵閉めるけど」
「は、入ります」
申し訳ない気持ちもあったが、少しでも坂木くんと一緒に過ごせるのは嬉しかった。
坂木くんはシャワーを浴びると言って浴室に向った。
私は食材を冷蔵庫になおし、調味料をなおそうと思ったら、お砂糖を買うのを忘れた事に気づいた。
私の家もお砂糖が切れていて、買わなきゃいけなかったのに忘れてしまうなんて。
後で買いに行かなきゃな。
暫くすると、坂木くんがシャワーを浴び終えて、部屋に戻ってきた。
「お腹空いたでしょ?お米をまだ炊いてないからパスタでもいいかな?」
「……」
返事は言わなかったけど、何も言わないって事は、食べてくれるって事だよね?
少しだけ坂木くんをわかってきたような気がする。
私はパスタを茹でて、和風パスタを作ることにした。