壊れるほど抱きしめて
和風パスタが出来上り、二人で食べた。
私は美味しいと思ったけど、坂木くんはどうかな?
何も言わずに黙々と食べてるからわからない。
でも食べてくれてるって事は不味いってわけではないよね?
パスタを食べ終わり、私はキッチンに行きお皿を洗った。
お皿を洗い終わるとお米を研いで、炊飯器にセットした。
夕食まではまだ時間があるし、私はお砂糖を買いに行く事にした。
「坂木くん、お砂糖を買うの忘れたから買いに行ってくるね。私の家も切らしてて、買うのわすれちゃったから」
そう言って鞄を持った。
「俺が行く」
「え?でも……」
「砂糖だけでいいのか?」
「う、うん」
そう言うと坂木くんは立ち上がり、車の鍵と財布を持って部屋から出て行った。
何もせずにじっとしてるのは落ち着かなかったから、掃除でもする事にした。
まずは敷布団のシーツを外し、薄い毛布と一緒に洗濯をした。
敷布団はベランダに干して、掃除機をかける。
だけど、あまり物がないからすぐに終わってしまい、今度は拭き掃除をする。
そしてタンスの上を拭いた時だった。
タンスの上にあった箱が下に落ちてしまい、慌ててそれを拾う。
箱の中には写真が入っていたみたいで、写真を手に取って見ると、そこには友達と笑顔で写る坂木くんの姿があった。
「昔はこんな風に笑ってたんだ」
いつか私もこの笑顔を見る事が出来るかな?
そんな事を思いながら写真を箱に入れて、最後の一枚を手にした時に、私はその写真を見て胸が苦しくなった。
そこには制服を着た綺麗な女性と、その女性の肩を抱く坂木くんの姿。
二人は幸せそうに笑っていて、きっとこの女性が"かおり"さんなんだって思った。
坂木くんをこんなに笑顔にさせられるかおりさんが羨ましくもあり、嫉妬もしてしまう。
事情は分からないけど、一緒に居ないって事は別れたって事だよね?
それに坂木くんは、今の会社に入社してからずっと、彼女が居るようには見えなかった。
こんなに幸せそうに笑う二人に何があったんだろう……。