壊れるほど抱きしめて
私が写真を箱に直してタンスの上に置くと、坂木くんが帰ってきた。
「お、お帰りなさい。買ってきてくれてありがとう」
「別に……」
相変わらず"別に"が口癖だ。
あんな写真を見てしまうと、今の坂木くんの姿は、やはり姉を失った聖と少し似ている気がする。
坂木くん、一体何があったの?
あなたを想うほど、私は苦しくなる。
そしてどうしてこんなに悲しくなるのだろう。
私は坂木くんが買ってきてくれたお砂糖を容器に入れた。
その後は拭き掃除の続きをしていたら、坂木くんから『掃除なんてしなくていい』と言われてしまったが、『掃除が好きだからさせて』と言って勝手に色々な所を拭いた。
何かをしてなければ、さっきの写真の二人の事を考えてしまいそうで、違う事に集中したかった。
拭き掃除が終わると、洗濯物をベランダに干して、今度は洋服や作業着を洗濯した。
洗濯が終わるまでまだ時間がかかるから、冷蔵庫から食材を取り出した。
色々と考えて、今日は中華にしようと思ってたから、餃子の下準備をする事にした。
その間は何も考えずにすんだし、途中で洗濯物を干したり、また料理の続きをしたりしていたら時間は過ぎていった。
だが集中したいがために、料理を作りすぎてしまった。
麻婆豆腐とチャプチェとエビチリ、酢の物に中華スープ。
後は焼くだけの餃子。
まぁ、そのおかげで余計な事は考えなくてすんだのだけど。