壊れるほど抱きしめて



中に入るとあまり物はなく、ベッドとタンスくらいで、後は必要な家電があるくらいだ。


私は中に入ったものの、どうしていいか分からず立っていた。


「立ってないで座れば。俺、先に風呂入るから」


そう言って坂木くんはお風呂に入ってしまった。


男の人の部屋に入るのは久しぶりだった。
彼氏も半年前に別れてから居ない。
初めて男の人と二人きりとかじゃないけど、彼氏でもない人の部屋ってだけで落ち着かなかった。
知らない人ではないけれど、普段から顔色一つ変えない坂木くんは、何を考えてるのかも掴めないから落ち着かないかもしれない。


坂木くんがお風呂から上がるまでの間、酔いも段々と冷めてきた。


お風呂から上がってきた坂木くんは、上半身裸で首にタオルを巻いて私の前に現れた。


ドキッーー!


顔の表情はあまり変わらないけど、その姿は何だか妖艶で、いつも作業着を着ている坂木くんとのギャップにドキッとした。


「風呂、入れば。着替えは俺のしかないかけど用意しとくから……」


「あ、ありがとう」


そう言って私は立ち上がり浴室に向った。


服を脱ぎ、お風呂に入る。
湯船にゆっくり浸かると気持よくて寝てしまいそうになった。


私がお風呂から上がると、脱いでいた服は坂木くんが洗濯をしてくれていた。


タオルを取り体を拭くと、坂木くんが用意してくれていたスウェットの上下を着た。


下着の代えは無いから上はともかく、下は何か違和感がある。
けど、泊まらせてもらえて着替えまで貸してもらった事に感謝しなきゃいけないよね。


私はドライヤーを借りて髪の毛を乾かすと、坂木くんの所に向った。



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