壊れるほど抱きしめて
「かおりの日記を見たかおりの両親は、聖也に言ったそうだ『お前がかおりを殺した』と、だから葬儀にすら聖也は行く事も出来ず、その日から聖也はまるで別人のようになってしまった」
「そんなっ!」
私は気づけば堪えていた涙がポロポロと流れていた。
坂木くんは最愛の人を亡くし、更には両親から『お前がかおりを殺した』なんて言われてしまってどんなに苦しんだ事だろう。
愛してるからこそ好きな人には心配かけたくなくて、自分がイジメられてる事も言わず、坂木くんの前では笑顔でいたかおりさん。
きっと別れる事はしたくなかったからイジメにも耐えてたのかもしれない。
嘘をついてまで坂木くんと別れたくなかったのだろう。
そして坂木くんもまた、かおりさんが自殺して分かったイジメに、気づけなかった悔しさ、自分が原因でかおりさんが一人で苦しんでいた事、かおりさんの両親に言われた言葉。
きっと彼は自分を責め続けて今まで過ごしてきたんだと思う。
だからあんな苦しそうな顔を……。
「まだ聖也は苦しんでるんだな。聖也が悪いわけでもないし、かおりが悪いわけでもない。確かにあの二人は愛し合っていたし、幸せそうだった。イジメた奴らが憎くても、誰かもわからないし今更見つけた所でかおりが生き返る訳でもない。だけどさ、聖也に前に進んでほしいんだ。望月さん、聖也の事を支えてあげて?俺が出来なかった事を望月さんは出来たし、アイツのまた笑った顔が見たいんだ。かおりだってきっと聖也に笑ってほしいはずだから……」
「はい、私が出来る事はやってみます。それで一つ真鍋さんに調べてもらいたい事があるんですけどいいですか?」
「何?」
「かおりさんのーーー」
私は真鍋さんに言った。
「わかった!今日は話せてよかった。じゃあまた連絡するね?」
「はい!こちらこそありがとうございました」
そう言って私達は喫茶店を出て別れた。
坂木くんが前に進む為にやれる事はやってみよう。