壊れるほど抱きしめて
「着替えありがとう。洗濯もしくれて」
「終ったら勝手にベランダに干していいから」
「うん、ありがとう」
坂木くんはそう言うと、テレビのニュースを見ていた。
私も洗濯が終わるまで、一緒にニュースを見ていた時。
『続いてのニュースです。女子高生が車に跳ねられ死亡しました』
そうアナウンサーが言った瞬間に、途中でリモコンを手に取った坂木くんはテレビの電源を急に消した。
さっきまで消すそぶりすら見せなかった坂木くんの顔を見ると、何だか苦しそうな表情をしていた。
だけど何も聞けないし、ニュースを見たくなかっただけかもしれない。
それに……、交通事故のニュースを見るのは私も辛かったりする。
苦しそうな表情をした坂木くんも気にはなるけど、洗濯が丁度終わり、私は立ち上がると自分の洗濯物を取り出して、ベランダに干させて貰った。
洗濯物を干し終わり、ベランダから部屋に戻ると、坂木くんは歯磨きをしていて、私にも予備の歯ブラシがあったのか渡された。
私は『ありがとう』と言って歯磨きを済ませて部屋にもどる。
「予備の布団とか無いからあんたはベッドを使って」
「え?だけど坂木くんは何処で寝るの?」
「下にそのまま寝る」
「まだ朝晩は冷えるし風引いちゃうよ。泊まらせてもらってベッドを使うなんて出来ないから私が下で寝る。坂木くんがベッドに寝て?」
「……あんたが風邪引くだろ」
「私は体は強いから風邪なんか引かないから大丈夫だよ!熱なんて滅多に出ないから」
「そんな奴に限って熱が出たりするだろ。あんたがベッドに寝ろ」
私が下で寝ると言っても、坂木くんはいつもよりも口数も多く、下で寝る事を譲らない。
だけど私が鍵をロッカーに忘れてしまって、坂木くんの家に泊まらせて貰ってるし、そこは私だって譲れない。
坂木くんは電気を常夜灯だけにして、そのまま床に毛布を持って寝転がろうとしたから、私は坂木くんの腕を掴んで勢いよく引っ張ってしまい、そのまま一緒にベッドに倒れこんでしまった。