壊れるほど抱きしめて
「あなた……」
「……本当は彼が悪いんじゃないってわかってる。君の言うとおり、毎日一緒に居て生活していた私達でさえかおりがイジメに苦しんでるのは気づかなかったし気づけなかった。だけどかおりの日記を見ると、イジメの原因はアイツと一緒に居たからだ。アイツと付き合わなければかおりはっ」
そう言ってかおりさんの父親は涙を流した。
「悪いけど今日は帰ってもらえないか」
「わかりました。だけど私は何度でもここへ足を運びます」
そう言って頭を下げて家を後にした。
かおりさんの両親の気持ちもわかる。
イジメも誰がしたのかわからない。
恨む相手もわからずに、イジメの原因の坂木くんを恨むしか出来なかったのだろう。
だけどきっとわかってくれると思う。
そして坂木くんにも前にちゃんと進んでほしいから。
それから私は毎日、かおりさんの両親の自宅に足を運んだ。
だけど『帰って下さい』の一言で、会ってはくれなかった。
時間が掛かっても必ずわかってくれる日が来ることを信じて、私は毎日、通い続けた。
かおりさんの両親の家に通い続けて一ヶ月が経ったある日。
今日はアパートには帰らずに、仕事が終わって直接かおりさんの両親の家に向かった。
私がかおりさんの両親の家に着いて車を降りると、かおりさんの父親がちょうど家に帰ってきた所だった。