壊れるほど抱きしめて
「坂木くん、アレ一緒にやろうよ」
そう言って子供連れの親子が沢山いる場所に向かった。
ちょうどヤギの餌やりを出来るみたいで、人が集まっている。
私達もその輪の中に入り、飼育員から餌を受け取り私もヤギに餌をやってみた。
餌をやる時に手まで食べられそうな勢いだったけど、餌やりは楽しい。
そして坂木くんを見てみると、ちゃんとヤギに餌をやっていた。
普段は人とは必要以外はまったく話さないけど、動物だったら会話をする事もないから、ショッピングモールに行った時は嫌そうだったが、今はそんな感じには見えない。
ヤギの餌やりを終えて、朝から何も食べていない坂木くんもそろそろお腹が空いたと思い、弁当を食べることにした。
椅子に座り、弁当を広げて二人で食べだした。
坂木くんは予想通り、お腹が空いていたのか無言で沢山食べている。
こうして会話がなくても今日、動物園に来たことは思い出になる。
今日、この日を私は一生忘れないよ。
私は沢山は食べれなかったけど、坂木くんは残さずキレイに弁当を食べてくれた。
弁当を食べた後はまた二人で歩いて動物を見た。
動物達を全部見終えて帰る前に、お土産売り場に寄り、お土産を買うことにした。
工場の皆が食べれるようにクッキーを手に取り、可愛いヤギのぬいぐるみも欲しくなり、手に取って見たが、買うのはやめてクッキーだけ買うことにした。
お土産売り場を出ると坂木くんは私に言った。
「俺トイレ行くから先に車に乗ってて」
「トイレくらい待ってるから行ってきていいよ?」
「今日は暑いし、先に車のエンジン掛けて冷しておいて」
「え、わかった」
六月下旬だし、今日みたいに天気の良い日は確かに暑い。
私は坂木くんに言われたように、先に車に戻りエンジンを掛けた。