壊れるほど抱きしめて
暫く車で待ってると、坂木くんがやってきた。
無言で車に乗って私に袋を渡した。
「これは?」
「やる」
「え?」
そう言って袋の中を見ると、さっき見ていたヤギのぬいぐるみだった。
「これ……」
「いらないなら捨てていいから」
「捨てるなんてそんな!ありがとう、大事にするね」
まさか坂木くんが私にぬいぐるみを買ってくれるなんて思ってもいなかった。
私が欲しそうにしていたの見ていたのかな?
私は嬉しくて、涙がでそうなのをグッと堪えて車を走らせた。
アパートに帰った私は一度自分の部屋に帰り、坂木くんが買ってくれたぬいぐるみをベッドに置いた。
その後は冷蔵庫から食材を袋に入れて、用意していた自分の荷物も一緒に持って坂木くんの部屋の前に行った。
ーーーピンポーン
暫くして玄関の扉が開く。
「今日は泊まらせてもらうね?」
そう言ってまた勝手に坂木くんの部屋の中に入って行った。
アパートに着いて自分の部屋に入った私が、また坂木くんの部屋に来て泊まるとは思ってもいなかっただろう。
私が勝手に部屋の中に入っても、坂木くんは何も言わなかったし、言っても無駄だと思ったのかもしれない。
私は食材をキッチンに持って行き、料理を作り出した。
坂木くんは疲れたのかベッドに横になって寝ている。
明日も坂木くんが食べられるように、今日はカレーにした。
冷凍も出来るように多めにカレーを作った。
料理も終わり、お風呂掃除をしてお湯を溜める。
その間に洗濯をしてベランダに干したりした。
夜になり、私は坂木くんを起こす。