壊れるほど抱きしめて
壊れるほど抱きしめて
目が覚めると隣では坂木くんが寝ていた。
こうして一緒に居るのもあと少し……。
私は彼の頰に手を当て、唇にそっとキスをした。
そのままベッドから出ると、私は浴室に向いシャワーを浴びる。
『小春っ』そう坂木くんが私の名前を呼んでくれただけで十分だ。
私に気持ちがなくても、ほんの少し坂木くんと過ごした時間は、私の宝物だから……。
シャワーを浴び終えた私は、着替えてドライヤーをかけた。
そのままメイクをして、彼の寝ているベッドまで向かうと、彼は起きていてベッドに座っていた。
「おはよう。ごめん、ドライヤーの音が煩くて起こしちゃったよね?」
「……別に」
前にも似たような会話をしたのを思い出すと少しだけ笑みが溢れる。
坂木くんは立ち上がり浴室に向かった。
私は朝食を作る為にキッチンへ向う。
昨日に作ったカレーを小分けにしてタッパに詰めて冷凍し、鍋に入っているカレーは冷蔵庫に冷やした。
朝食の準備が出来あがると同時に、坂木くんもシャワーを浴び終え、着替えて部屋にやってきた。
「朝食出来たから食べよ」
そう言って料理をテーブルに運び一緒に食べた。
朝食を食べた後は食器を洗い、時計を見ると朝の十時を過ぎた所だった。
「坂木くん、そろそろ出ようか?今日は車には乗らずに電車に乗るから」
「……」
相変わらず坂木くんは何も言わない。
何故車ではなく電車で行くのかと言うと、彼と少しでも一緒に居たかったからだ。