イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
君フレーバー。
甘い、甘いチョコレート。
口の中で緩やかに溶ける。

子供の頃から私にとって。
それは幸せの象徴だった。

学校から帰って、ランドセルを机の脇に引っ掛けて。
手を洗って、お母さんが好きだった、赤いパッケージの甘いチョコレートを一欠片かじる。今日あったことを話す。聞いてくれてるときの、お母さんの笑顔。

私はピアノの練習をしなきゃなんない、お母さんは夕飯の支度をそろそろ始める時間だね。もう少し暗くなったらお父さんがバスで、帰ってくるし。

けどもう少し、お喋りしたいな。
お菓子を摘まんで。ジュースのお代わりは、冷蔵庫から自分で持って来るからさ。

甘いチョコレートが大好きで。
しかもそれが、想いを寄せる人と一緒に食べるものだとしたら、幸せの大きさは計り知れない。


と、思ってたんだけど。






「朝礼で発表するのはなんか気が引けたから、今言わせてもらうんだけど、」


お昼の休憩時間中。

社員食堂でランチを食べ終え、そろそろ日課であるデザートのチョコレートを摘まもうか、としていた矢先。


「なんだよ日浦、改まって…」


同じテーブルに座っていた社員たちが、皆一様に箸を止め、注目した。こほん、と咳払いをして、立ち上がった日浦に。


「実は俺、結婚することになりましたー!」


一瞬、呼吸の仕方を忘れた。
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