うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 ふう、と溜息をつく。

「そんなこと朝日が言うなんて珍しいな。
 もしかして、実はこれが初恋だったりしてね、朝日」
と神田が適当なことを言って笑う。

「そうだねえ。
 そうかもねえ。

 小学生って、好きな子、いじめたくなるもんね」

「でも、初恋って叶わないんだよ、朝日」
としみじみと神田が言ったとき、瑞季のスマホが鳴った。

 横から覗いた朝日がそれを見て取る。

『もしも……』
と声が聞こえかけたとき、朝日が先に言った。

「了弥、出てこい。
 神田と二人で、相楽さんを監禁中だ」

 朝日は、店の場所を告げ、勝手に切る。

 神田は笑いながら、それを見ていた。

 二人の顔を見ながら、瑞季は呟く。

「……神田、香月、朝日、了弥。

 なんで?
 たまたま?

 呼びやすいから?」

 その呟きに、神田が、
「やっと気づいた」
と笑う。
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