うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 その瞬間、頭の中を、ずっと引っかかっていた幾つかのことが駆け巡った。

「あーっ!」
と叫んで立ち上がる。

 店内の視線がこちらに集まり、神田と朝日が両サイドから瑞季の手を引っ張り、座らせた。

 気づけば、この騒がしい店内で、自分が最も騒がしい人に成り果てている。

 朝日が、チューハイのジョッキを手にしたまま呟いた。

「だいたいさあ。
 僕らが、トイレットペーパーにバーカとか書かないって言うの」

 どうやら、医者を呼んだ方がいいのは、私のようだった。

 そういえば、幾つも思い当たる節が。

 頭の中で、ぐるぐるといろんな映像が回っていたそのとき、電話がかかった。

 未里だった。

『瑞季?
 あれからどうなった?』
と言っている電話を朝日がまた勝手に取る。

「どうも、梶原未里さん。
 久しぶり。

 佐藤朝日です」

 ええっ? と未里が言う。
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