うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
『どうなってんのっ。
 ねえ、瑞季っ。

 佐藤朝日はやめとけって言ったでしょーっ』

「本人前にして言うかね、この人は」
と朝日は文句を言っている。

「婿養子のご主人とお幸せに」
と言って勝手に切る。

 またすぐに鳴りだした。

 わめき出す未里に、
「違う違う。
 みんなで呑んでるの。
 未里も来る?」
と言うと、今度は行きたいとわめき出す。
 
 そのとき、店の扉が開いた。

 了弥が顔を覗け、すぐにこちらに気がついた。

「早いじゃん。
 近くに居たの?」
と朝日が言っていた。

「姫の両サイドは僕らだから。
 お前は正面ね」
と神田が言う。

「とんだうっかり姫だけど」
と二人は笑っている。

 目の前の切り株のような椅子に、走ってきたのか息を切らしている了弥が座る。
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