うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
うっかり姫とうっかり王子
 



「だから、お前の婚約者など知らんと言ってるんだ」

「紹介したじゃん。
 街でバッタリ会ったとき~。

 もう幼稚園くらいから、僕につきまとってたんだよ、あの女」

「今も見えないだけで、つきまとってたりしてね」

 揉めている了弥と朝日……

 いや、一方的に朝日が文句を言っているだけで、了弥はあまり聞いてはいないが。

 そこに神田が余計な口を挟み、慌てて、朝日があたりを見回していた。

「しかし、解せないねえ。
 そのとき、香月も僕も居たと思うのに、なんで了弥?」
と神田がよくわからない文句を言っていた。

「お前に、了弥ってことは、なんかこう、眼つきの悪い、腹黒そうな男が好みなんじゃないの? その婚約者って」
と言って、二人に、腹黒いのはお前だろ、と言われていた。

 なんか、このメンツ。
 これはこれでいい組み合わせだ。

 いい組み合わせなんだが……。

「うっかり姫、どうしたの?
 お酒、進んでないじゃない」
と朝日がこちらを見て言ってくる。

 ……うっかり姫、やめてください。

 いや、いろいろと思い返してみれば、本当に、いろいろとうっかりだったんだが。
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