うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 あのとき、未里は言っていた。

『佐藤と、……ちょっとうるさいなー、もうっ』

 そこで、子どもに飛び乗られ、話が中断して、

『佐藤と帰ったみたいよって。
 美羽も酔ってたから定かじゃないみたいだけど。

 ……って、離せっ、翔っ!』

 そのあとも、

『あんたさ。
 まさか、佐藤朝日の方と連絡取ったりしてないよね?』
と言っていた。

 佐藤朝日の方、と。

「佐藤……二人居るのなら、そう言って」

「あ、また、姫が倒れてる」
と神田が串を食べながら言う。

「えっ?
 なんで、あんた、佐藤くんの名字が佐藤だって知らないの?」
と未里は駆けつけ三杯、頼んでもないのに行きそうな勢いで、チューハイを呑んだあとで訊いてきた。

「だって、了弥が転校してきてたとき、この人、複雑骨折で、学校来てなかったじゃない」
と朝日が倒れている瑞季の頭を指差し言う。

「あーっ。
 そうだっけー?

 なんかあんた、ずっと居た気がしてたから」

 怪奇現象か。
 私の霊でも学校に通ってたとでも言うのか。
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