うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 いや、だが、まあわかる。

 私も未里とはずっと一緒に居た気がしてるけど、よく考えたら、あんまり同じクラスだったこともないし。

 まあ、人の記憶なんてそんなものか、と思う。

 そうそう。
 言ってた言ってた。

『うちの両親がなかなか大変だったから。
 何度も離婚してみたり、結婚してみたり』

 了弥曰く、『二人で、阿呆みたいに、離婚したり結婚したり繰り返してる』その間に、転校してきてたのが、うちの学校でうちのクラスだったのだろう。

 そして、恐らく、一ヶ月くらいで復縁して、『佐藤了弥』は去って行った。

「一ヶ月だったのかー。
 佐藤くん、クラスに馴染んでたし、イケメンだったから、インパクト強くて、ずっと卒業まで居た気がしてたよー」

 それもどうだ。

 こいつの記憶は本当に当てにならん、と古い友人の顔を見るが、自分自身の失態続きなので、なにも言えなかった。

「そう。
 だから、僕らは、小学校、高校、大学が一緒なわけ」
と神田が言う。

 なるほどー。
 それは仲がいいはずですねー、と口に出したら、棒読みになりそうなことを思っていた。
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