うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 だからさっきも、私は未里のことを名前でしか言ったことないのに、『梶原さん』だけで、
『ああ、コロッケの』
になったわけだな……。

 あのピラミッドの番組。
 まあ、新聞のテレビ欄とかでわかることだけど。

 朝日くんが、ピラミッドの番組があると同窓会で言ってたらしいし。

 思い起こせば、いろいろとポロポロと……。

 きっと他にもなんかうっかり気づかず、通り過ぎっちゃったことがあるんだろうな、と思っていた。

「ねえ、瑞季。
 そういえば、あんた、こんなところで、イケメンに囲まれて酒呑んでていいの。

 会社の課長と一緒に暮らしてるんじゃなかったの?」
と言われ、目の前に居る了弥を指差すと、未里はしばらくジョッキを口に運ぶ手が止まっていた。

「……あーっ!」
と叫ぼうとする未里の口を朝日と二人で塞ぐ。

 予想がついていたからだ。

「やだっ。
 了弥って、佐藤くんっ?

 だって、真島了弥って……

 あー、そうかっ。

 だって、あんた、真島課長って言うから。

 了弥って、よくある名前だし。

 嘘ーっ。

 もしかして、佐藤くんが、初恋の人だったとか?」
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