うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 そういえば、うちで、ピラミッドの番組が始まると騒いだとき、了弥は壁の時計を見ずに、自分の腕時計を見ていたな、と思い出す。

 うちの時計が遅れていると知っていたからだったのか。

 そういえば、来て、だけで、家まで来たし。

 部屋番号も教えてないのに。

 あの日から今までずっと動転したままだった気がする。

 だからそんなことにも気づかなかったんだなと、今、気がついた。

 なんとなく、壁の時計を見ていると、いきなり後ろから了弥が腕を回し、抱き寄せてきた。

「ちょ、ちょっと、あの、お茶を……」
と言うが、

「いらん」
と言われる。

 そのまま、ベッドまで引きずって行かれた。

 そこに、ぽい、と投げられる。

 なんとか座ると、横に腰掛けた了弥が、目を見つめて言ってくる。

「やり直したいんだ、瑞季。
 今度はちゃんとお前の意志を聞いてから」

 いや、既になにも訊かずに此処まで引きずってきてますよね? と思ったが……。
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