溺愛の桜
#01 新山朋奈と宇野優生
19XX年3月9日午前0時ごろ。

新山夫婦は、元気な女の子を授かった。

名前は朋奈(ともな)。

”誰とでも仲良くなれますように”との願いを込めて付けられた。



「朋奈、人と接する時はいつでも笑顔でいるのよ。」

「そう、お父さんはお母さんの笑顔に惹かれたんだからな!」



両親の教えもあり、朋奈は願い通り人見知りのない、人に好かれ易い明るい子に育った。

幼いながらにニコニコ人懐こい朋奈を好きになる男子も少なくはなかった。



「きょうね、くまぐみのゆうまくんとつきあうことになったんだよ!」

「あら?先週かいと君とお付き合いしたんじゃなかった?」

「だってかいとくん、いっつもチュウしてくるんだもん。おくちベタベタになるからもうやだ!」



お付き合いといっても、たかが子供同士の口約束。

今時の子はそんなもんかと、当時の母親はそれ以上問い詰めはしなかった。

朋奈もその場その場が楽しければそれで良いのだと思っていた。

小学校、中学校、高校まで、その能天気な思考は変わらず。

楽しい事も辛い事もあった学生ライフを終え、数年経ち、朋奈は21歳を迎えた。
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