最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
物語のはじまり
轟々と燃え盛る紅蓮の炎が、舐めるように小部屋を覆い尽くすのはあっという間だった。
静かな夜の闇に覆われていた室内に、古めかしい肖像画や家紋を記したタペストリーが、パチパチと灼け爆ぜる音が響く。
燃えた家具や装飾品が元の形を失い、次々と脆く崩れ落ちる様子が、火によってもたらされる不気味な明るさに照らされて見えた。
室温は瞬く間に高温になり、激しい熱と、もうもうとした煙が一気に充満する。
それはさながら恐ろしい地獄絵図のよう。
……ところが、そんな赤い灼熱地獄の中で、身じろぎもせずに平然と立ち尽くす者がいた。
その者の髪は周囲の炎の色を凌駕するほどの、まさに燃え上がるような真紅。
そして瞳の色も、熱い血潮を連想させるような見事な赤色。
雄々しく、猛々しくも精悍な顔つきの、その者の肌は白磁のように滑らかで一切の血色が見られない。
まるで人のものとは思えぬような不思議な質感と、周囲の業火を制するような圧倒的な存在感を漂わせ、火災の脅威をものともせずに立っている。
「本来ならば、我らが人に関わるは、法度」
喉が灼けるほどの熱された空気の中で、その者がポツリと言葉を漏らした。
静かな夜の闇に覆われていた室内に、古めかしい肖像画や家紋を記したタペストリーが、パチパチと灼け爆ぜる音が響く。
燃えた家具や装飾品が元の形を失い、次々と脆く崩れ落ちる様子が、火によってもたらされる不気味な明るさに照らされて見えた。
室温は瞬く間に高温になり、激しい熱と、もうもうとした煙が一気に充満する。
それはさながら恐ろしい地獄絵図のよう。
……ところが、そんな赤い灼熱地獄の中で、身じろぎもせずに平然と立ち尽くす者がいた。
その者の髪は周囲の炎の色を凌駕するほどの、まさに燃え上がるような真紅。
そして瞳の色も、熱い血潮を連想させるような見事な赤色。
雄々しく、猛々しくも精悍な顔つきの、その者の肌は白磁のように滑らかで一切の血色が見られない。
まるで人のものとは思えぬような不思議な質感と、周囲の業火を制するような圧倒的な存在感を漂わせ、火災の脅威をものともせずに立っている。
「本来ならば、我らが人に関わるは、法度」
喉が灼けるほどの熱された空気の中で、その者がポツリと言葉を漏らした。
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