最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 なんだか少しテンションの下がったモネグロス様が、気を取り直したように話を続けた。

「その剣が、神話の時代からずっと王家に受け継がれているのです。王位継承者が生まれると、厄災を除けるためのお守りとして、王子の枕元に置く習わしがあるのです」

「え? 厄災除けのお守りに?」

「そうです」

「それでエヴルが火事に遭ったんなら、その剣ってぜんぜんご利益ないってことじゃないですか? 誰なんですか? そんな役に立たない剣を作った神様って」

「さ、さあ? 私の知り合いの神ではないみたいですが」

「それで、その役に立たない剣がなんなんです?」

「……結構役に立つ剣なんですよ? それはともかく、イフリートがエヴルを火事から救い出したとき、剣も一緒に持ち出したのですよ」

 傍らで私たちの話を聞いていたイフリート様が、何度も大きくうなづいた。

「その剣は、我が盟友ヴァニス王の思い出の品。炎の中に捨て置くわけには、いかぬ」

「剣は王子の命と共に、燃え尽きたと思われています。でも、それを疑問視する声もあったのですよ。大火になったわけでもないのに、短時間の火事ごときで神剣が跡形もなく消滅するものか?とね。王子生存説が流れた由来です」

「あ、じゃあ、王子の名乗りをあげたエヴルが、炎の中に消えたはずの剣を所持していたなら……」

「そうです。剣と王子はやはり火災を生き延びていた。そしてその剣を所有しているエヴルは本物の王子である……という展開になるはずです」
< 102 / 162 >

この作品をシェア

pagetop