最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 モネグロス様がふわりと右手を掲げると、指の先からサラサラと金粉のような砂が生まれて風に舞った。

 陽射しを浴びて光り輝く砂は細い筋となり、イフリート様とノーム様の周りを、まるで生き物のようにクルクル螺旋状に回っている。

 やがてふたりの姿が完全に金色に包まれ、その輝きがパッと消えた瞬間、目の前にイルフォとテーラが立っていた。

「あ……!?」

「人間の世界に精霊の姿では行けませんからね。私の力で封を施しました。だいぶ人間に近くなっている分、どうしても精霊としての力は弱まりますが」

 目の前の奇跡に目を見張っていた私は、モネグロス様の説明にハッとした。

 モネグロス様の力で、精霊の力を封印できるの?
 じゃあひょっとしたら、私の精霊の力も封印できるのじゃないかしら!?

「キアラさん、エヴルさん、私とイフリートもおてつだいします。まかせてください!」

「エヴルよ、お前の玉座への道を、我が示すなり」

「あ、ありがとうございます。イフリート様、ノーム様」

「私とアグアは、この神殿から離れることはできません。だからあなたたちとは、ここでお別れですね……」

 モネグロス様が寂しそうに声を詰まらせる。
 その両目と鼻先がじんわり赤くなっているのを見て、私の胸もギュッと寂しさに絞めつけられた。
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