最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
あれは……?
「あれは……公爵家の兵士だ!」
エヴルが小さな声をあげ、私たちは同時に息をのんだ。
公爵家の兵士!? いけない! このままだと見つかってしまう!
とっさに近くの大きな荷台の陰にサッと身を潜めて、額をくっつけ合わせながらヒソヒソと会話を交わす。
「あれは公爵の兵士なの? 本当に?」
「はい。あの鎧は間違いありません」
「足音の数が、じんじょうじゃありません。もっともっと大勢きてるみたいですよ?」
「なんと、我らを追って来たのであろうか?」
追って来た?
だって私たちがここにいることは誰も知らないはずなのに、いったいどうして……?
混乱しながら兵士の様子を窺う私の目に、さらに驚きの人物が映った。
思わず荷台から顔を出して小さく叫んでしまう。
「オ……オルテンシア夫人!?」
「キアラ様、隠れてください!」
私の腕をエヴルが慌てて引っ張った。
もう一度荷台の陰からよくよく目を凝らして見たけれど……間違いない。あれはやっぱりオルテンシア夫人だ。
しかもその恰好が、婚約式のときの妖艶なドレス姿とは打って変わった、シンプルな上着とズボンと、黒いブーツを履いた男装の麗人スタイル。
しかもしかも、夫人の横にはちゃっかりティボー様までいる。
ふたりは数人の兵士たちと固まって、なにやら真剣に話し込んでいる様子だった。
「な、なに話してるのかしら? ここからじゃ遠すぎて聞こえないわ」
「キアラさんなら、風のちからをつかえば聞こえるはずですよ?」
「え? 私の風の力?」
「はい、おねがいします」
「あれは……公爵家の兵士だ!」
エヴルが小さな声をあげ、私たちは同時に息をのんだ。
公爵家の兵士!? いけない! このままだと見つかってしまう!
とっさに近くの大きな荷台の陰にサッと身を潜めて、額をくっつけ合わせながらヒソヒソと会話を交わす。
「あれは公爵の兵士なの? 本当に?」
「はい。あの鎧は間違いありません」
「足音の数が、じんじょうじゃありません。もっともっと大勢きてるみたいですよ?」
「なんと、我らを追って来たのであろうか?」
追って来た?
だって私たちがここにいることは誰も知らないはずなのに、いったいどうして……?
混乱しながら兵士の様子を窺う私の目に、さらに驚きの人物が映った。
思わず荷台から顔を出して小さく叫んでしまう。
「オ……オルテンシア夫人!?」
「キアラ様、隠れてください!」
私の腕をエヴルが慌てて引っ張った。
もう一度荷台の陰からよくよく目を凝らして見たけれど……間違いない。あれはやっぱりオルテンシア夫人だ。
しかもその恰好が、婚約式のときの妖艶なドレス姿とは打って変わった、シンプルな上着とズボンと、黒いブーツを履いた男装の麗人スタイル。
しかもしかも、夫人の横にはちゃっかりティボー様までいる。
ふたりは数人の兵士たちと固まって、なにやら真剣に話し込んでいる様子だった。
「な、なに話してるのかしら? ここからじゃ遠すぎて聞こえないわ」
「キアラさんなら、風のちからをつかえば聞こえるはずですよ?」
「え? 私の風の力?」
「はい、おねがいします」