最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「ひょっとしてあの鎧の連中、キアラお嬢様ば探してるだか? 嫁入りが嫌で逃げて来ちまったんかい?」

「う、うん。これまでの事情をものすごく簡単に要約すれば、そうなるの」

「まあ、気持ちはわかるなあ。あのかぼちゃパンツの男が旦那なんだべ? ありゃダメだわ。ウチの羊にもバカにされて、尻に頭突き食らってたもんなあ」

 顔を顰めているおじさんに、エヴルが勢い込んで話しかける。

「おじさん、頼みがあるんだ。この荷台で俺たちを神殿まで運んでくれないか?」

「はあ? 神殿?」

「詳しく説明している余裕はないけど、神殿に行きさえすれば、キアラ様はあのバカ息子と結婚しなくて済むんだよ。だからどうか頼む!」

 事情を知らないおじさんは目をぱちくりさせていたけれど、私たちの真剣な表情を見て、すぐにニッと笑った。

「おお、よくわかんねえけど、まかしとけ! ウチの羊が認めねえような男の所さなんか、大事なキアラお嬢様を嫁がせるわけにはいがねえべさ!」

「あ……ありがとう! おじさん!」

 おじさんの荷台の中に全員で乗り込み、上から大きな筵をかけてもらって、身を隠す。
 そしてゆっくり牛に引かれながら、村の真ん中を移動した。
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