最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
でもヴァニス王の御代からずっと、我が国で傍系が即位するなんて一度もなかったことだし、この件に関して世間の風当たりは相当強かった。
なんと言ってもティボー様ご本人が、自ら磁石のように悪評を吸い寄せる人だし。
その風当たりを少しでも弱めるための苦肉の策として、白羽の矢を立てられたのが私。
建国神話にあやかる精霊の血を継いだ私が妻の座に収まれば、それはそのままティボー様の権威となって、箔がつく。
つまり私は、王位継承劇のこじつけに利用されたわけだ。
いまどき誰も建国神話なんて作り話、本気で信じてはいないのに。
「冗談ではありませんよ! なぜキアラ様が、あんなバカ息子と結婚しなければならないのですか! そもそも、あんな男が導いたりしたら国が傾く!」
「まったくその通りだとは思うが、声を抑えろ。ここはその男の本陣なのだぞ?」
憤慨するエヴルを冷静に諌める夫に、テーラが不安げな表情で切々と訴えた。
「でもあなた、私もティボー様ではこの国を導けないと思いますわ。だってティボー様って、実はすごい方向オンチなんですよ」
「……そうなのか?」
「はい。あの人この前、お屋敷のお手洗いから出てきて、戻るには右に行かなきゃならないところをなぜか迷わず左に進んで、そのままずっと自分の過ちに気がつかなかった人ですから」
「……」
「あ、あの男、自分の屋敷ですら道に迷うのか!? あぁ、最悪だ!」
エヴルが頭を抱え込みながら呻いた。
なんと言ってもティボー様ご本人が、自ら磁石のように悪評を吸い寄せる人だし。
その風当たりを少しでも弱めるための苦肉の策として、白羽の矢を立てられたのが私。
建国神話にあやかる精霊の血を継いだ私が妻の座に収まれば、それはそのままティボー様の権威となって、箔がつく。
つまり私は、王位継承劇のこじつけに利用されたわけだ。
いまどき誰も建国神話なんて作り話、本気で信じてはいないのに。
「冗談ではありませんよ! なぜキアラ様が、あんなバカ息子と結婚しなければならないのですか! そもそも、あんな男が導いたりしたら国が傾く!」
「まったくその通りだとは思うが、声を抑えろ。ここはその男の本陣なのだぞ?」
憤慨するエヴルを冷静に諌める夫に、テーラが不安げな表情で切々と訴えた。
「でもあなた、私もティボー様ではこの国を導けないと思いますわ。だってティボー様って、実はすごい方向オンチなんですよ」
「……そうなのか?」
「はい。あの人この前、お屋敷のお手洗いから出てきて、戻るには右に行かなきゃならないところをなぜか迷わず左に進んで、そのままずっと自分の過ちに気がつかなかった人ですから」
「……」
「あ、あの男、自分の屋敷ですら道に迷うのか!? あぁ、最悪だ!」
エヴルが頭を抱え込みながら呻いた。