最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「この犯罪者たちめ、ようやく見つけたぞ! この場で私が直々に処分してやろう!」

 私とエヴルを睨みつけながら憎々し気に叫ぶティボー様を、夫人が冷静に制した。

「騎士は処分しても構いませんが、キアラ嬢にはまだ利用価値がございますわ」

「ん? それはどういうことだね?」

「さすがにうら若き婚約者を処分しては、世間体が悪すぎます。予定通り結婚して、ティボー様の王位が安定した頃を見計らってから、毒でも飲んでもらいましょう。病死と発表すれば、新妻を失った悲劇の国王として国中から同情を集めることができますわ」

「おお、なるほど!」

「その後で、私を王妃の座に迎えてくださいますわね?」

「もちろんだとも! 私はあんな小便臭い田舎娘になど、なんの興味もないよ」

「小……!? あ、相変わらず失礼な男ね! なによ、そっちこそボンレスハムみたいな体してるボンレスバカ息子のくせに!」

 よくもそんな残酷な殺害プランを、本人を目の前に嬉々として話し合えるものね!
 やっぱりボンレスバカ息子に国を任せるわけには、絶対にいかない!

 すっかり頭に血がのぼった私は、これまでの恨みつらみをぶつけるようにティボー様を怒鳴りつけた。

「王位を継ぐのは、あなたなんかじゃない! このエヴルは二十年前の火災を生き延びた本物の王子よ! 彼こそが王位を継ぐべき者なのよ!」

「はあ? なにを寝言を言っているんだこの小便田舎娘は。いまどき王子生存説など誰が信じるか。バカも休み休みに……」

「いいえティボー様。恐らくそれは事実なのでしょう」
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