最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「キアラ様」
 私の目の前で屈みこむエヴルの手には、しっかりとヴァニス王の剣が握られている。
 やっと本来の所有者の元へ戻ることができた剣の白刃は、眩しいほどに輝いていた。

「……エヴル、逃げなかったの?」
「私はずっとあなた様のお側におります。いついかなる、どんな時でも、必ずやキアラ様をお守りいたします」

 私の両目に涙がじわりと滲む。
 そうだね、あなたは私に、そう誓ってくれたね。
 私の騎士は誓い通りに、命を懸けて私を守ってくれたんだ。

「キアラ様、愛しています」
 そう言ってエヴルは私を優しく抱き寄せ、大きな胸にそっと包み込んでくれる。
 彼の温もりを感じて、私は泣き笑いを浮かべながら言葉を返した。

「うん。私も愛してる」
「キアラ様、あなた様を愛しています。愛しています。愛しています」

 うん。うん。うん。
 想いのすべてを吐き出すような、何度も繰り返される彼の言葉に、私も何度も同じ言葉を返す。
 うなづくたびに、両目から溢れる涙がポロポロ頬を伝って落ちた。

 心の奥から熱くて大きな感情の塊りが込み上げてきて、口から泣き声になって飛び出していく。
 安堵と喜びが泉のように噴き出して、子どもみたいに彼にしがみついて大泣きしながら、私は思う存分愛の言葉を捧げた。

「愛してる。エヴル、私はずっとあなたの側にいる」

 失われてしまうはずだった機会を手に入れて、私は今度こそ、心からエヴルに誓う。
 もう二度と離れない。いついかなる、どんな時でも、私はエヴルを愛し、側にいると誓う。

 誓うよ……エヴル……。





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