最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 次期王位継承者の婚約者という立場になった私は、この王宮に住まいを移して、お妃教育を受けているところ。

 王室に伝わる歴史や、特別な伝統行事、友好国や敵対国それぞれの歴史やマナーや言葉の勉強など、学ばなければならないことが山積みだ。

「あぁ、今日も勉強漬けの一日が始まるのね」

 ベッドに寝そべったまま大きな溜め息をつく私の隣にゴロリと寝ころびながら、エヴルが私の鼻先をチョンと指先でつついた。

「ぜひ頑張ってください。立派なお妃になるために」

「朝から女性の部屋に忍び込んで、こっそりキスをする不埒な王太子様に、そんなこと言われたくないけど」

 エヴルは楽しげに笑って、私に覆い被さりキスをした。

正式に婚約して以来、待ってましたと言わんばかりに、エヴルは毎晩私の部屋へ忍んでくる。

 結婚の儀が済むまでは清い体でいたいという私の望みを聞いて、最後の一線は超えずにいてくれているけど、私の体の見えない部分は、毎夜エヴルがつける愛の刻印の花びらだらけ。

 いまもキスをしながら私の夜着を脱がせつつ、いたずらに指先を遊ばせている。
 くすぐるように撫でられた皮膚の下から、ジワジワと熱い感覚が掘り起こされてしまって、私は慌ててエヴルの体を押し戻そうとした。

「こら、朝からなにしてるの?」
「最後の一線さえ守ってくれるなら、なにをしてもいいとキアラ様がおっしゃったのでしょう?」
「そ、それはエヴルが……!」
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