最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「御婚約、まことにおめでとうございます」
「キアラ様、お初にお目にかかります。以後、どうぞお見知りおきを」
侯爵だの、伯爵だの、男爵だの、将軍だの、その奥方だの息子だの娘だの。
ああ、あんまり人数が多すぎて覚えきれない。
挨拶したそばから順番に、記憶の層からポロポロ零れ落ちていく。
「本日はまことにおめでとうございます。ティボー様、キアラ様」
艶やかな声に目を向けると、真紅のドレス姿の美しい女性が微笑みながら立っている。
その妙齢の女性は黒い巻き毛を高く結い上げていて、純白の羽根扇からチラチラと覗く口元のほくろが魅力的な人だった。
「おお、これはオルテンシア夫人!」
その女性の姿を見た途端、ティボー様が弾んだ声を出した。
そして貴族たちの列を押し退けていそいそと夫人の側に駆け寄る。
彼女の手の甲に恭しくキスをして、私の目の前に連れてきて自慢げに紹介した。
「紹介しよう。彼女はオルテンシア夫人だ。社交界の華だよ」
「初めまして。キアラ様」
ニコリと微笑む表情から、白い首筋から、大胆に深く切り込んだ胸元から、香しい色香がふわりと匂い立つ。
空気に消える花の香とは違う、明確な目的と主張をもった人工的な香水のような色香だった。
「キアラ様、お初にお目にかかります。以後、どうぞお見知りおきを」
侯爵だの、伯爵だの、男爵だの、将軍だの、その奥方だの息子だの娘だの。
ああ、あんまり人数が多すぎて覚えきれない。
挨拶したそばから順番に、記憶の層からポロポロ零れ落ちていく。
「本日はまことにおめでとうございます。ティボー様、キアラ様」
艶やかな声に目を向けると、真紅のドレス姿の美しい女性が微笑みながら立っている。
その妙齢の女性は黒い巻き毛を高く結い上げていて、純白の羽根扇からチラチラと覗く口元のほくろが魅力的な人だった。
「おお、これはオルテンシア夫人!」
その女性の姿を見た途端、ティボー様が弾んだ声を出した。
そして貴族たちの列を押し退けていそいそと夫人の側に駆け寄る。
彼女の手の甲に恭しくキスをして、私の目の前に連れてきて自慢げに紹介した。
「紹介しよう。彼女はオルテンシア夫人だ。社交界の華だよ」
「初めまして。キアラ様」
ニコリと微笑む表情から、白い首筋から、大胆に深く切り込んだ胸元から、香しい色香がふわりと匂い立つ。
空気に消える花の香とは違う、明確な目的と主張をもった人工的な香水のような色香だった。