最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
ちょうどその時、楽団の奏でる音楽が変わって軽快な三拍子のリズムがホールに流れ始める。
途端にオルテンシア夫人は目をキラキラと輝かせて、少女のようにはしゃいだ声を上げた。
「まあ! この曲! ティボー様と初めてお目にかかった時に流れていた曲ですわ!」
「覚えているよ。あの舞踏会であなたは、舞い降りた美の女神のように輝きながら踊っていたね」
「ティボー様、よろしければ思い出の曲を私とご一緒に…… あ!」
夫人はハッとしたように私の顔を見て、恥ずかしそうに扇で顔を隠した。
「んまあ、私としたことがお恥ずかしい。こんな美しいキアラ様がいらっしゃるのに、ティボー様が私ごときと踊るわけが……」
「なにを言うか、夫人。主催者として客人をもてなすのは当然の務めだ。喜んでお相手しよう」
そう言ってティボー様は、ぷっくりとした肉付きのよい手で夫人の手を取り、気取った足どりでホールの中央にエスコートする。
向かい合って手を取り合ったふたりは、音楽に合わせて軽やかに踊り始めた。
周囲の空気そっちのけで熱く見つめ合い、微笑みながらホール狭しと踊り続ける姿はまさに、『ふたりのために世界はあるの』状態。
その『世界』から完全に締め出されてしまった私は、ひとりでポツンと佇んでいた。
途端にオルテンシア夫人は目をキラキラと輝かせて、少女のようにはしゃいだ声を上げた。
「まあ! この曲! ティボー様と初めてお目にかかった時に流れていた曲ですわ!」
「覚えているよ。あの舞踏会であなたは、舞い降りた美の女神のように輝きながら踊っていたね」
「ティボー様、よろしければ思い出の曲を私とご一緒に…… あ!」
夫人はハッとしたように私の顔を見て、恥ずかしそうに扇で顔を隠した。
「んまあ、私としたことがお恥ずかしい。こんな美しいキアラ様がいらっしゃるのに、ティボー様が私ごときと踊るわけが……」
「なにを言うか、夫人。主催者として客人をもてなすのは当然の務めだ。喜んでお相手しよう」
そう言ってティボー様は、ぷっくりとした肉付きのよい手で夫人の手を取り、気取った足どりでホールの中央にエスコートする。
向かい合って手を取り合ったふたりは、音楽に合わせて軽やかに踊り始めた。
周囲の空気そっちのけで熱く見つめ合い、微笑みながらホール狭しと踊り続ける姿はまさに、『ふたりのために世界はあるの』状態。
その『世界』から完全に締め出されてしまった私は、ひとりでポツンと佇んでいた。