最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 好、き……?

 動揺する私の髪に、エヴルの頬が摺り寄せられる感触がする。
 私を抱きしめる両腕にそっと力が込められ、優しく包み込まれた胸が早鐘のように鳴り響いた。

「キアラ様、キアラ様……」

 熱に浮かされたように囁くエヴルの息に耳をくすぐられて、体がジーンと痺れる。

 背中に感じる大きくて広い胸の感触や、固くてがっしりした腕の逞しさに、頬が勝手に熱くなってうろたえてしまう。

「昔から、ずっとあなた様をお慕いしていました。キアラ様」
「……!」

 心臓が破裂するかと思った。
 いままで誰にも言われたことのない特別な言葉を聞いて、私の頭にカアッと血が集まり、全身が熱く燃えあがる。

 息をするのも苦しいほどに逸る鼓動を抱える私に、エヴルの切ない告白が続いた。

「身分違いであることは重々承知です。だから一生、隠し続ける覚悟でした。でももう我慢できない。言わずにいられない。私はキアラ様を、心からお慕いしています」

 後ろから私を抱きしめているエヴルの表情は窺えないけれど、その声はどこまでも誠実で、熱く、嘘偽りは微塵も感じられない。

 エヴルが……私のことを想ってくれていたなんて……!
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