最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 正式に婚約した時点で、私はもうティボー様の所有物も同然。
 貴族夫人の不義密通は国外追放の重罪だ。

「それは承知しております。だから誰の目にも触れぬよう、一生密かにキアラ様への想いを遂げる覚悟です」

「一生? 死ぬまでエヴルは私の愛人として生きていくの? そんなのは嫌。私の人生にエヴルを巻き込めない」

「私自身が、その道を望んでいるとしてもですか?」

「あなたには私の分まで幸せになってほしいの」

「私の幸せを、あなた様に勝手に決めつけられたくはない!」

 強引に向かい合わされ、私とエヴルはお互いの顔を見合った。

 黒曜石の瞳の奥に激しい情熱の炎が揺らいでいる。
 引き込まれるような美しさに魅入られ、いまにも我を忘れてしまいそうで私は顔をそむけた。
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