最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中！

「キアラ様の隣が、私のいるべき場所。あなた様を愛すること以外の幸せなど、私にはありえない。あなた様だけが私のすべてです」

　顎を指先で支えられ、そっと上向きにされた。
　食い入るようなエヴルの瞳に貫かれて、私はもう目を逸らせない。

　見惚れるほどの麗しい顔立ちと、透き通るような一途な心と、燃えるような情熱的な言葉。

　真正面からぶつけられる全身全霊の想いに翻弄されて、エヴルへの想いが揺れ動く。

「キアラ様、どうか私の口づけをお受けください」

　その言葉に、思わず肩が震えた。
　ナトゥール国の貞淑な乙女が初めて交わす接吻。
　それはすなわち永遠の愛を受け入れ、そして捧げる事にほかならない。

　愛し合う者同士が唯一無二の契りの誓いを交わす、最も神聖な行為だ。

「私は嘘偽りなく心をさらけ出した。あなた様の本当の心も、どうか私にさらけ出してください」

　向かい合い、見つめ合う私とエヴルの距離が、ゆっくりと近づいていく。

　これから私は、彼に唇を奪われてしまう。それを知っていながら絡め捕られたように動けない。