最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「な……な……?」
両目と口をポカリと開いて硬直していたティボー様の表情が、すぐに怒りの形相に変化し始めた。
小さな目がキリキリと吊り上がり、顔の色がおしろいで隠しきれないほどみるみる真っ赤に染まっていく。
「お、お前たち、いま口づけをしていたな!? してただろう!? 見たぞ!? たしかにこの目で見たぞ!」
ダンダンと床を踏み鳴らしながらこちらに近づいて来て、人差し指をグッと突き出しながら裏返った大声で喚き出した。
「婚約式の最中に、ほかの男とベタつくなどと……! 信じられん不貞行為だ! いったいどんな育ちをしているんだ恥を知れ!」
とっさに『あんたがそれを言いますか?』とは思ったけれど、口には出せない。
法律では夫がいくら愛人を作ろうと、不義密通の罪には問われない。
断罪されるのは常に夫人と、その愛人。
だからこの場では百パーセント私とエヴルが犯罪者で、ティボー様は完全に被害者だ。
「こんな恥をかかされて、黙っていられるか! ふたりとも私が国外追放してやる! 追放だ! 追放だ追放だ追放だぁー!」
息の続く限り絶叫するティボー様の取り乱した様子を見ていたエヴルが、サッと片膝をついて畏まった。
「無論、罰は粛々と受けます。ですが罰に値するのは私のみ。なぜなら、嫌がるキアラ様の唇を私が無理やり奪ったのです」
両目と口をポカリと開いて硬直していたティボー様の表情が、すぐに怒りの形相に変化し始めた。
小さな目がキリキリと吊り上がり、顔の色がおしろいで隠しきれないほどみるみる真っ赤に染まっていく。
「お、お前たち、いま口づけをしていたな!? してただろう!? 見たぞ!? たしかにこの目で見たぞ!」
ダンダンと床を踏み鳴らしながらこちらに近づいて来て、人差し指をグッと突き出しながら裏返った大声で喚き出した。
「婚約式の最中に、ほかの男とベタつくなどと……! 信じられん不貞行為だ! いったいどんな育ちをしているんだ恥を知れ!」
とっさに『あんたがそれを言いますか?』とは思ったけれど、口には出せない。
法律では夫がいくら愛人を作ろうと、不義密通の罪には問われない。
断罪されるのは常に夫人と、その愛人。
だからこの場では百パーセント私とエヴルが犯罪者で、ティボー様は完全に被害者だ。
「こんな恥をかかされて、黙っていられるか! ふたりとも私が国外追放してやる! 追放だ! 追放だ追放だ追放だぁー!」
息の続く限り絶叫するティボー様の取り乱した様子を見ていたエヴルが、サッと片膝をついて畏まった。
「無論、罰は粛々と受けます。ですが罰に値するのは私のみ。なぜなら、嫌がるキアラ様の唇を私が無理やり奪ったのです」