最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
……エヴル!? あなた、なにを言っているの!?
「ち、違……!」
「なにとぞ、哀れなキアラ様を罪に問うようなことだけはお許しください。なにとぞ、なにとぞお願い申しあげます」
私の言葉を遮るように懇願するエヴルを、ティボー様は憎々し気な顔で睨みつけてフンッと鼻から息を出した。
「キアラ嬢は不問に付すが、お前はいますぐ部屋から出ていけ! そしてこの先一生、キアラ嬢に会うことは私が許さんぞ!」
「はい。寛大な御処置に感謝いたします。それでは」
スッと立ち上がったエヴルは私と向かい合った。
顔を強張らせている私とは対照的に、彼の表情は落ち着き払って微笑みすら浮かべている。
でも黒い瞳の奥には、深い悲しみの色が見え隠れしていた。
「キアラ様、いつまでもお側にいる誓いを守れなくなってしまいました」
「エヴル……」
「それでも私は、遠い空からあなた様を生涯見守り続けています」
それだけ告げて、エヴルが踵を返した。
私から離れていく背中を見ているうちに、ようやく思考が動き出す。
ボケッと見送るつもりなの!? ティボー様にお許しを願わないと!
「ティボー様! どうかご容赦くださいませ!」
私は床にひざまずき、ティボー様の体に縋って必死に懇願した。
長上着を握りしめてグイグイ引っ張るたびに、ティボー様の帽子の馬飾りがタイミングよくビョンビョンと揺れ動く。
「臣下の罪は、主の罪! 罰を受けるべきはエヴルではなくこの私です!」
「キ、キアラ様、なにをおっしゃっておいでですか!」
部屋を出て行きかけていたエヴルが驚いて足を止め、振り返った。
でも私は構わずティボー様に縋って懇願し続ける。
「私が責任を負いますから、なんなりと罰をお申しつけくださいませ!」
「ち、違……!」
「なにとぞ、哀れなキアラ様を罪に問うようなことだけはお許しください。なにとぞ、なにとぞお願い申しあげます」
私の言葉を遮るように懇願するエヴルを、ティボー様は憎々し気な顔で睨みつけてフンッと鼻から息を出した。
「キアラ嬢は不問に付すが、お前はいますぐ部屋から出ていけ! そしてこの先一生、キアラ嬢に会うことは私が許さんぞ!」
「はい。寛大な御処置に感謝いたします。それでは」
スッと立ち上がったエヴルは私と向かい合った。
顔を強張らせている私とは対照的に、彼の表情は落ち着き払って微笑みすら浮かべている。
でも黒い瞳の奥には、深い悲しみの色が見え隠れしていた。
「キアラ様、いつまでもお側にいる誓いを守れなくなってしまいました」
「エヴル……」
「それでも私は、遠い空からあなた様を生涯見守り続けています」
それだけ告げて、エヴルが踵を返した。
私から離れていく背中を見ているうちに、ようやく思考が動き出す。
ボケッと見送るつもりなの!? ティボー様にお許しを願わないと!
「ティボー様! どうかご容赦くださいませ!」
私は床にひざまずき、ティボー様の体に縋って必死に懇願した。
長上着を握りしめてグイグイ引っ張るたびに、ティボー様の帽子の馬飾りがタイミングよくビョンビョンと揺れ動く。
「臣下の罪は、主の罪! 罰を受けるべきはエヴルではなくこの私です!」
「キ、キアラ様、なにをおっしゃっておいでですか!」
部屋を出て行きかけていたエヴルが驚いて足を止め、振り返った。
でも私は構わずティボー様に縋って懇願し続ける。
「私が責任を負いますから、なんなりと罰をお申しつけくださいませ!」