最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「精霊家の忠義心には一点の曇りもございません! 私が罰を受け、いますぐこの国を出て行きます!」

「これは王位継承者たる私と、精霊家代表であるキアラ嬢との問題だ。騎士ごときの出る幕ではないよ」

「し、しかし……!」

「すでに下賤な男に穢されてしまった唇が、次期国王への忠誠の証となるのだぞ? 実に名誉なことではないか! しょせんは嘘っぱちな家系を笠に着るしか能のない田舎娘に、これ以上相応しい扱いはない!」

 せせら笑いと一緒に吐き出された暴言にエヴルがカッと目を剥いた。

 形のよい眉が吊り上がり、わなわなと震える全身からは抑えきれない激しい怒りが漏れ出している。

「き、貴様! 貴族の令嬢相手にそこまで侮辱するか!」

「先に侮辱したのはお前たちだ! 婚約者に裏切られた私の屈辱を思い知れ!」

「そもそも一番最初に侮辱したのも裏切ったのも、そっちだろうが!」

「はあぁ~? 侮辱ぅ? いつぅ? どこでぇ? 誰がぁ? どうしてどうやってぇ?」
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