最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
吹き荒れる風
 走り始めて間もなく、背後からティボー様のキンキン声が聞こえてくる。

「誰か! 衛兵! あのふたりを捕えろ! 次期国王たる私を殺害しようとした極悪人だ! 不義密通と国家への反逆罪で、即刻死罪だーー!」

 わ、やっぱり予想通りの展開になった。
 もうこうなったら後はない。なんとかしてこの屋敷から逃げ出さなければ、本当に私もエヴルも死罪だ!

「キアラ様? エヴルさん? どうしたんですか?」
「……あ、イルフォ! テーラ! よかった!」

 廊下の前方に、イルフォとテーラがポカンとした顔で立っているのが見えて、私たちは大急ぎで駆け寄った。
 そして息を切らしながら、ふたりに捲し立てる。

「ふたり共、一緒に逃げましょう!」

「え? 逃げる? なにかあったんですか?」

「うん、あったの! だから逃げよう!」

「ちょ、ちょっとキアラ様? あの、落ち着いて事情を説明してもらえますか?」

「あのね、私とエヴルが実は好き合っていて、キスしたらティボー様に見つかって、みんなを助けるために靴にキスしようとしたら、わざとじゃないんだけどエヴルがティボー様をひっくり返しちゃって、そしたら死罪になっちゃったの!」

「……すいませんキアラ様。意味がぜんぜん通じないんですけど」

「とにかく、のんびりしゃべっている暇はないの! 逃げなきゃ!」

「おい、いたぞ! 捕えろ!」

 廊下のずっと向こうの方からバタバタと衛兵たちが駆け寄って来るのが見える。うわあ、見つかった!
< 39 / 162 >

この作品をシェア

pagetop