最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
剣が交わされるたび、甲高い金属音が鳴り響く。
漆黒の髪を靡かせながら次々と敵をなぎ倒していくエヴルの勇姿に見惚れていると、向こうの衛兵の列が急に乱れた。
「ええい、お前たち邪魔だよ! どけ!」
列を掻き分けながらティボー様がドタドタと駆け込んでくるのが見える。
「オルテンシア夫人! ほら、あそこだよ!」
「はい。ティボー様」
私たちの方を指さすティボー様の後ろから、オルテンシア夫人が悠々と姿を現した。
その白い手に、銀で装飾されたクロスボウが握られているのを見た私は仰天する。
な、なんなの!? 武器を持ってうろつき回る貴婦人なんて、見たことも聞いたこともない!
あの人、まさかあれでエヴルを射るつもりじゃないでしょうね!?
「さあ夫人! ご自慢の腕を見せておくれ!」
「もちろんですわ。どうぞ私にお任せを」
オルテンシア夫人が右の肩口にクロスボウの台座を押し当ててグッと顎を引き、矢の先をエヴルに向けながら身構えた。
一連の動作が冷静で、いかにも手慣れている。
女だてらにかなりの腕前なんだろう。
あれじゃ本当にエヴルに当たってしまうかもしれない。
当たり所が悪ければ命にかかわる大怪我になってしまう!
「エヴル危ない!」
大声で叫んだけれど、エヴルは息継ぐ間もなく襲いかかってくる衛兵たちの相手で手一杯。
思わず彼に向かって走り出そうとした私を、イルフォとテーラが力づくで抑えた。
漆黒の髪を靡かせながら次々と敵をなぎ倒していくエヴルの勇姿に見惚れていると、向こうの衛兵の列が急に乱れた。
「ええい、お前たち邪魔だよ! どけ!」
列を掻き分けながらティボー様がドタドタと駆け込んでくるのが見える。
「オルテンシア夫人! ほら、あそこだよ!」
「はい。ティボー様」
私たちの方を指さすティボー様の後ろから、オルテンシア夫人が悠々と姿を現した。
その白い手に、銀で装飾されたクロスボウが握られているのを見た私は仰天する。
な、なんなの!? 武器を持ってうろつき回る貴婦人なんて、見たことも聞いたこともない!
あの人、まさかあれでエヴルを射るつもりじゃないでしょうね!?
「さあ夫人! ご自慢の腕を見せておくれ!」
「もちろんですわ。どうぞ私にお任せを」
オルテンシア夫人が右の肩口にクロスボウの台座を押し当ててグッと顎を引き、矢の先をエヴルに向けながら身構えた。
一連の動作が冷静で、いかにも手慣れている。
女だてらにかなりの腕前なんだろう。
あれじゃ本当にエヴルに当たってしまうかもしれない。
当たり所が悪ければ命にかかわる大怪我になってしまう!
「エヴル危ない!」
大声で叫んだけれど、エヴルは息継ぐ間もなく襲いかかってくる衛兵たちの相手で手一杯。
思わず彼に向かって走り出そうとした私を、イルフォとテーラが力づくで抑えた。