最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「ありえないわ。昔からずっとずっと、あのふたりはそんな、調子、で……」

 不意にある疑問が湧いて、私の声は尻すぼみになってしまった。

 ……そう。私が物心つかない頃からイルフォとテーラはずっと私の側にいて、面倒をみてくれていた。
 じゃあ、あのふたりっていま、何歳なの?

 それなりの年齢になっているはずなのに、どう見ても二十歳そこそこにしか見えない。
 年を取っていないの? それこそありえない。

 しかもその事実に、今の今まで私もエヴルも、屋敷の誰も、まるで気がついていなかった不自然さ。
 そんな不可解なこと、人間に可能なはずがない。

 ほ、本当に、本当にあのふたりは建国神話の英雄なの? そんなまさか……。

「キアラ様、ご覧になっていただきたいものがあります。きっとあなた様にも納得いただけるでしょう」

 完全にパニック状態に陥っている私の肩を、エヴルがしっかりと抱き寄せる。
 そのまま私はヒョイと抱き上げられてしまった。
< 53 / 162 >

この作品をシェア

pagetop