最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
テーラはこんな最悪な結婚話にもかかわらず、文句も言わずに精霊家から私についてきてくれた唯一の侍女だ。
大事にしないとバチが当たる。
本当にこんな結婚、絶対間違ってると思う。
本来なら精霊家なんて、公爵家との縁談話が持ち上がるような身分じゃないのに。
建国神話をもっともらしく彩るための、お皿の脇にちょこんと添えられた、一切れの香味野菜のような家なんだもの。
「キアラ様、それでも精霊家は救国の英雄の末裔なんです。由緒正しき一族ですよ」
「そうね。眉唾な家系だけど歴史だけは古いから、粗雑に扱うわけにもいかなくて、国の厄介者な立場になってるけどね」
そんなオデキのような一族に相応しく、統括する領地だって国の脇っちょの、ちょこんとした農地のみ。
そんな矮小貴族の末裔として生まれた私は、自分で言うのもなんだけど、令嬢としてはかなり規格外だ。
幼い頃は毎日泥んこになって領地内を駆け回り、畑の野菜を勝手にもぎ取って食べて、怒った小作人に追いかけ回されていた。
逃げ込んだ小屋の中で、牛と一緒に夜を明かすなんてこともしょっちゅうの、押しも押されぬ庶民派令嬢だ。
「キアラ様はその庶民派精霊家の中でも、不世出にワイルドなご令嬢ですけどね」
「そんなワイルドな私が、なんでオルレアンス公爵のご長男なんて、大層な貴公子と婚約しなければならないの?」
……と言う私の声に覆い被さるように、勢い込んだ声が聞こえてきた。
「まったく同感です! こちらのご令息がキアラ様に相応しいお相手とは、僭越ながらこのエヴル、到底思えません!」
大事にしないとバチが当たる。
本当にこんな結婚、絶対間違ってると思う。
本来なら精霊家なんて、公爵家との縁談話が持ち上がるような身分じゃないのに。
建国神話をもっともらしく彩るための、お皿の脇にちょこんと添えられた、一切れの香味野菜のような家なんだもの。
「キアラ様、それでも精霊家は救国の英雄の末裔なんです。由緒正しき一族ですよ」
「そうね。眉唾な家系だけど歴史だけは古いから、粗雑に扱うわけにもいかなくて、国の厄介者な立場になってるけどね」
そんなオデキのような一族に相応しく、統括する領地だって国の脇っちょの、ちょこんとした農地のみ。
そんな矮小貴族の末裔として生まれた私は、自分で言うのもなんだけど、令嬢としてはかなり規格外だ。
幼い頃は毎日泥んこになって領地内を駆け回り、畑の野菜を勝手にもぎ取って食べて、怒った小作人に追いかけ回されていた。
逃げ込んだ小屋の中で、牛と一緒に夜を明かすなんてこともしょっちゅうの、押しも押されぬ庶民派令嬢だ。
「キアラ様はその庶民派精霊家の中でも、不世出にワイルドなご令嬢ですけどね」
「そんなワイルドな私が、なんでオルレアンス公爵のご長男なんて、大層な貴公子と婚約しなければならないの?」
……と言う私の声に覆い被さるように、勢い込んだ声が聞こえてきた。
「まったく同感です! こちらのご令息がキアラ様に相応しいお相手とは、僭越ながらこのエヴル、到底思えません!」