最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「だいじょうぶですか? モネグロス」
「さっさと起き上がるべし」
「モ、モネグロス様!?」

 わりと冷静な態度の精霊様たちと違って、エヴルが血相変えてモネグロス様に駆け寄った。

 私も慌ててモネグロス様の元へ走り、その御躰を抱き起そうと手を伸ばして、考え直して引っ込める。

 だって触っちゃってもいいの? 相手は神様なのよ? 畏れ多いわ。

 親切のつもりなのに、『無礼者!』なんて神の怒りに触れてバチでも当てられちゃったら、目も当てられないし。

 逡巡していたら、いきなりモネグロス様がガバッと上体を起こした。
 ギクッを身を震わす私とエヴルの顔を、土にまみれた顔で食い入るように交互に見つめている。

「……」
「モネグロス、様? どうなさいました?」

 やがて金色の目に涙がブワッと盛りあがったかと思うと、モネグロス様は顔中の土を洗い流すほどの勢いで、「……うわあ!」と泣き出した。

 え!? ちょ、ちょっとなに突然泣き出してるの!?
 人の顔見た途端に泣き出さないでよ失礼な!

「モネグロス様!? なんで泣いてるんですか!?」

「う、うえ……うあぁ、うおぅ……」

「なにしゃべってるのか、ぜんぜんわからないんですけど!」

「心配ありませんよ、キアラさん。モネグロスはね、懐かしくて泣いているだけなのですから」
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