最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 おっとり微笑みながらそう言うアグア様の言葉に、モネグロス様が涙をポロポロ零しながら、首がもげるんじゃないかと思うほどブンブンうなづいている。

「か、かつての盟友の血を引く者と、時を経てこうして巡り会えるとは……。私は、私は嬉しいのです! 本当に嬉し……うぅーっ!」

 モネグロス様が流す滝のような涙を呆気にとられて眺めているうちに、さっきまでの私の熱い感動と興奮は、潮が引くようにサーッと冷めていってしまった。

 だって顔中の土と涙をアグア様に優しく拭いてもらいながら、えぐえぐ泣いている神様の姿を見たら、マグマの熱だって冷めるわ。

 なんだか精霊家の料理人のおばちゃんとこの、まだ五歳の息子さんとそっくり。
 これがこの世で最も偉大な神様なの?
 ……大丈夫か? この世。

「グス、それで、体の方はもう大事ないのですか? キアラよ」
「あ、はあ、おかげ様で」
「よかった。心配したのですよ?」

 モネグロス様が鼻の頭を赤くしながら、子どものように純真な笑顔でニッコリ微笑んだ。

 太陽がキラキラ輝くようなその笑顔は、なかなか可愛らしくて魅力的だった。
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