最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「眠っていた風の力が突然目覚めたせいで、体に負担がかかったのでしょう。でも、もう大丈夫。アグアが水の力で癒しましたからね」
「眠っていた風の力、ですか?」
「そうです。もうここ何代も精霊家では、精霊の力に目覚める者は現れなかったはずなのですが」
たしかにモネグロス様の言う通り、そんな現象は聞いたことがない。
だから私たちはなにも知らないまま、これまでずっと田舎の片隅で、庶民派貴族としてのんびり暮らしてこられた。
とんでもない王位継承劇に巻き込まれて、ティボー様と婚約させられてしまうまでは。
「詳しい事情は聞きました。キアラさん、さぞつらかったでしょう」
アグア様が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
その人間味溢れる言葉から温かい思いやりが感じられて、つい涙ぐんでしまう。
指先で涙を拭う私を見て同情してくれたのか、モネグロス様がプンプン憤った。
「意に添わぬ婚姻を無理強いするなどと、なんとひどい人間でしょうね! その『バカ息子』とか言う名の男は!」
「……あの、『バカ息子』は名前じゃないんですけど」
「眠っていた風の力、ですか?」
「そうです。もうここ何代も精霊家では、精霊の力に目覚める者は現れなかったはずなのですが」
たしかにモネグロス様の言う通り、そんな現象は聞いたことがない。
だから私たちはなにも知らないまま、これまでずっと田舎の片隅で、庶民派貴族としてのんびり暮らしてこられた。
とんでもない王位継承劇に巻き込まれて、ティボー様と婚約させられてしまうまでは。
「詳しい事情は聞きました。キアラさん、さぞつらかったでしょう」
アグア様が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
その人間味溢れる言葉から温かい思いやりが感じられて、つい涙ぐんでしまう。
指先で涙を拭う私を見て同情してくれたのか、モネグロス様がプンプン憤った。
「意に添わぬ婚姻を無理強いするなどと、なんとひどい人間でしょうね! その『バカ息子』とか言う名の男は!」
「……あの、『バカ息子』は名前じゃないんですけど」