最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「イフリート、ノームよ、その『バカ息子』とかいう者とキアラの婚姻は、どうしても回避できないのですか?」

 イフリート様とノーム様が首を横に振って答えた。

「バカ息子との婚約は、すでに正式に成立せり。解消は困難と思われ」

「バカ息子さんは、とにかく問題のおおい人だったんです。こんやくを破棄なんてしたら、ますます大問題になっちゃいますから」

「つまり、契約は成立してしまったのですね? それは困りましたね……」

 モネグロス様とアグア様が、本当に困った様子で顔を見合わせた。
 ずっと黙ったまま控えていたエヴルが、そこで初めて口を挟む。

「僭越ながら、私にも発言をお許しください」

「もちろんですよ、エヴル」

「皆様が尊いお姿を世に現わし、『この婚約を無効にせよ』と告げてくだされば、無事に解消に至ると思うのですが」

 エヴルの言葉を聞いた私の胸に、パッと希望の明かりが灯った。
 たしかに建国神話の神様や精霊様が下すお告げなら、効果抜群。
 それに逆らおうとする恐れ知らずな人間なんていないだろう。

 これなら一発で、すべての問題が即時解消だ。
 私は不本意な結婚をしなくて済むし、婚約が解消されれば、不義密通なんて罪も帳消し。
 バカ息……じゃなくてティボー様だって、死罪死罪と喚き散らすこともないだろう。
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