最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「なにとぞ、皆様の御慈悲を賜りたく存じます」
「どうかお力添えくださいませ!」

 私とエヴルは揃って頭を下げた。
 ところがモネグロス様もアグア様も、イフリート様もノーム様も、なにも言わずにそれぞれの顔を見合わせているばかり。

 これで解決すると思っていた私は、その気まずい沈黙に一気に不安になった。

「じつは……そうはいかないんです」

 申し訳なさそうな声で、ノーム様がゆっくりと話し始めた。

「ねぇキアラさん、エヴルさん。神がほんとうに存在して、しかもその力を頼りにできると知ったら、人間ってどうなるとおもいますか?」

「え? それは……」

 ノーム様の言いたいことは、すぐわかった。
 神や精霊の存在を知ってしまったら、間違いなく人間はそれに頼る。

 寿命とか、天災とか、自分たちの力ではどうしようもない、本来なら涙を飲んで受け入れなければならないことも、受け入れられなくなる。

 つまり、我慢が効かなくなるんだ。
 ひとつ叶えてもらえば、次を願う。他の誰かが叶えてもらえば、自分も叶えてもらって当然だと思う。

 欲望は連鎖して、歯止めが効かなくなり、天井知らずに膨れあがってしまうだろう。
 そうなったらこの世は……悲惨だ。
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