最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「イフリートはわるくないです! アグアだってあのとき、火が広まらないよう、こっそり水の力をつかいましたよね!?」

「そ、それは……。それを言うならノームだって、『この子を側に置いて見守りたい』って泣いてせがんで、精霊家に引き取ったでしょう!?」

「だって、かわいそうです! 救っておいて見すてるなんて、できません!」

「その通りです! 我らは今さらキアラとエヴルを見捨ててはならないのですよ!」

「あのー……」

 神様と精霊様が、喧嘩腰でガンガン言い合う隙をついて、私は恐る恐る声をかけた。

「その話、本当なんですか……?」

 ピタッと言い争いを止めたモネグロス様たちが、「あ……」とつぶやきながらギクシャクと視線をエヴルに移す。

 エヴルは気後れしたように身を引きながら、自分に集中する視線をそれぞれ見返していた。

 私はそんなみんなの様子を眺めながら、頭の中を一生懸命整理する。

 ええと……。
 ナトゥーラ国本来の王位継承者だった王子様は生まれて間もなく、城を襲った火災で命を落とした。
 もう二十年も前のことだ。

 お可哀そうなことに、激しい炎に焼かれたせいで骨すら残らなかったらしい。

 その王子が実は救い出されていた? そして精霊家で密かに育てられていた?
 その王子様の正体が……
 エヴル……?
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